前回までのあらすじ
休憩時間を突然二人で過ごすことになった匠と結衣。
近所の名店「ブラン」へとパンを買いに連れ立っていく二人ですが…。
目次
競馬小説「アーサーの奇跡」第18話
第18話 ブランにて
ブランへは2分の道のりだった。
「なんだか混んでいるみたいですね…」
結衣が小さな声で話しかける。
連れ立って歩いていること自体、匠には訳が分からなかったが、その声に我を取り戻しながら
「そうですね…」
と匠は頷いた。
幸い回転が良かったことですぐに入店することができたが、入ってすぐ
「可愛いお店…」
と言う結衣に見とれている匠であった。
「良かったです…」
一言つぶやくと、今度は奥から突拍子もなく
「あれ、匠ちゃん!いらっしゃい…って、あれ?お隣に居るの…彼女さん?」
と聞き慣れた声に足を止められた。
これはまずいなと思った匠は
「いや、そうじゃなくて、たまたま今日だけ、アルバイトで入ってくれた人で…休憩が一緒だからこうやってお昼を買いに来たっていうわけで…」
すぐにその声に応答した。
同じ商店街を生きる中で知り合いが多いのは仕方ないが、考えも無しにブランに来たのは失敗したと思う匠だった。
「匠ちゃん、凄いラッキーじゃないの!こんなきれいな人と一緒なんて。ちょっと本当にびっくりしちゃった」
取り繕っている匠をよそに結衣を見つめる幼馴染・奏(かなで)。
結衣は会釈すると棚を見ながら嬉しそうにパンを選んで言った。
「匠さん、どれもおいしそうですよ。取るものがあったら言ってください」
「え?ああいいですよ、自分で取るし。結衣さんは好きなの取ってください」
つい照れ隠しで口調がとがった。
それを見ていた奏がニヤリとし
「匠ちゃん、もしか緊張してるう?うわあ、かっわいい~」
と匠をいじるような声を投げた。
「…はい」
と結衣は少しシュンとしつつ、気を取り直すようにパンを取ると
「(あ、まずかったかな…)」
と匠はその背中を見て心が痛んだ。
それからすぐさま
「(アホ!)」
と奏に向けて口パクで応戦をしたが、奏は既に来客対応で全く匠を見てはいなかった。
「いらっしゃいませ~」
奏はいつも通りの雰囲気で仕事をしている。
匠は適当にパンを選ぶと、結衣に向けて小声で話しかけた。
「あの。おれ、これからレジに行きます。買うものはもう選び終わりました?」
「僕」と言っていたことも忘れて、結衣にとっさに訊いてきた匠に
「…もうちょっと選びたいと思います。お気になさらずお会計をどうぞ…」
先程の空気のせいか匠を見た結衣の表情も曇っていた。
「それでは…」
と結衣に背中を向けてレジへ進んで行く匠だったが
「(ああ、馬鹿馬鹿。おれ何やってるんだ。結衣さんにちゃんと謝らなくちゃあ…)」
勝手に動く足を止められずに、そのままレジへと歩み去っていた。
そしてそこに奏が現れると
「(お前のせいだ)」
と言わんばかりに、目を細めてじっと奏を見ると、憮然と口をつぐむ匠だった。
すると奏が
「匠ちゃんに、あんな人がいるなんて驚いちゃったよ。はい、これ。おまけに入れておくからね」
奏なりに何かを察したのか、ビスケットを一枚入れてくれた。
「あ、ああ…」
匠がつぶやくと
「はい450円になりまーす!」
いつもの奏に戻っていた。
匠は支払うと袋を持って、ドアを開け、店の外へと出ていた。
外に出た瞬間、不意に背中に
「ありがとうございまーす!」
と聞こえて、匠はひとつ溜め息を漏らすと、公園へと足を向けるのだった。
次回予告
奏の一言に不意を突かれて雰囲気を壊してしまった匠。
結衣に謝りたいと思いながら公園でタイミングを待ちますが…
はじまりは:競馬小説「アーサーの奇跡」第1話 夏のひかり
匠と結衣の恋の行方はどうなるやら
ところで競馬必勝法ってあると思いますか?
おお~、しがない学生さん!ありがとうございます^^
そうですね…二人には幸せになってほしいですし、これからが勝負です。頑張って感動的な話になるよう、執筆して参ります。応援よろしくお願い申し上げます。
あと、競馬必勝法はあります。「裁定取引」になるレースを見つけられれば、ですが。これは全ての馬に賭け、オッズに合わせて金額を調整すれば勝てる時なので、見つけられれば必勝です。確か昔、佐賀競馬の8レースあたりであったような…。
とはいえこれも資金が数百万円は必要でしょうし、自分が買った影響でオッズが前後するのも加味しなくてはなりません。レースの探索、必要資金量、オッズの計算…高い壁が三つありますが、予想力は不要な必勝法です。(ただし、気の遠くなるような作業になるでしょう)
あとは、神レベルの予想力があれば…ですかね
返信ありがとうございます。
あるんですね、必勝法…
やばい、賭けたくなってきた。
はい、あります。
しかしこういったレースを探すの、半端な労力ではありませんし、見つけるのに何ヶ月や何年かかるか全く分かりません。
それも1日の中でどの場所で起こる事態かも分かりませんから、それをご承知の上でされるなら或いは必勝も有り得るでしょう。
ただ、はしくれとしてはお勧めしません。その時間や労力を掛けるならビジネスで稼ぐ方が早いので…
学生さんはまだお若いですし、時間をより有効に使ってのスキルアップを活かすチャンスがあります。競馬に限らず、どうか幸せに生きられる方を選んで下さい。