凱旋門賞で日本馬が勝てない理由

 

2017年10月1日、フランス・シャンティイ競馬場。

競馬界最高の栄誉

第96回凱旋門賞が、

この日発走となりました。

 

日本からは昨年の有馬記念優勝馬サトノダイヤモンドと、

帯同馬サトノノブレスが出走し、

大きな期待と注目を集めて発走となりましたが、

レースは欧州最強馬エネイブルの快勝で幕を閉じました。

 

近年、上がる一方だった日本馬の評価ですが、

今年は前哨戦のフォア賞から2頭とも完敗。

体勢を立て直されて臨みましたが、

悲願達成は夢と消えました・・・。

 

この結果を受けて湧き上がるのは、

エネイブルが強すぎた

という声と、

日本馬のレベルが低いのでは・・・

という疑問の声ですが、

この声を受けてはしくれは、

「凱旋門賞で日本馬が勝てない理由」

について、今回持論を展開したいと思います。

 

それでは早速ですが、

凱旋門賞で日本馬が勝てない最大の理由

について、お話したいと思います。

その最大の理由は・・・。

 

馬体が大きすぎるから

 

です。

 

・・・???

と思われた方、多くいらっしゃると思います。

 

ですがこれには純然なる事実と、

はしくれの得意とする相馬眼からの答えが、はっきりと出ているのです。

今日はその核心についてじっくり、

お話しする事にいたしましょう。

 

それでは、馬体が大きすぎるとは、どういう事なのか・・・

それをまず説明いたしましょう。

 

まず、「馬体が大きすぎる」というのは、

「馬体重が重すぎる」

という意味です。

 

まず、今年期待を背負ったサトノダイヤモンドですが・・・。

馬体重は凱旋門賞前の天皇賞春で506kgありました。

 

海外は馬体重を計る規則がありませんから、

実際にサトノダイヤモンドが当日何kgだったのかは、

画像からの推定でしかありません。

ですがおそらく510kg前後だったのではないかと思われます。

 

帯同馬サトノノブレスは、凱旋門賞前の金鯱賞で512kg

こちらは全く確認できなかったので、当日の馬体重は全く分かりません。

ですがまず、500kgは超える馬体であったでしょう。

 

因みに優勝したエネイブルですが、

画像では500kgもあるような大型馬には見えません。

450kgあるかないかくらいではないでしょうか・・・。

 

(エネイブル。画像はグリーンチャンネルのライヴ映像より。)

 

そしてこの馬体重には、

とても重要なサインが隠されているのです。

それは・・・。

 

今まで凱旋門賞で好走した日本馬は、

全て500kgを超えるような、大型馬では無かった

 

という事実です。

 

これは論より証拠ですので、

データを提示いたしましょう。

<>内左がデビュー時、右が引退の一番近くのレースで計測された馬体重です。

 

第78回(1999年)2着エルコンドルパサー=<462kg→472kg>

第85回(2006年)3着・失格ディープインパクト=<450kg→438kg>

第89回(2010年)2着ナカヤマフェスタ=<450kg→462kg>

第91・92回(2012・13年)共に2着オルフェーヴル=<448kg→466kg>

 

いかがでしょう。

今まで凱旋門賞で世界の頂に迫った4頭は、

全馬競走生活の最後まで500kgに満たないばかりか、

牡馬としてはやや小柄な部類の馬体重を記録しています。

 

特に日本競馬界の至宝・ディープインパクトに至っては、

デビュー時より引退時の方が馬体重が減る

という過程を辿っており、

引退時の体重は、牝馬でもやや小柄な部類に入ります。

 

ディープインパクトが敗れたあとの10年、

ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルを除く凱旋門賞出走馬9頭の内、

メイショウサムソン、ヴィクトワールピサ、アヴェンティーノ、キズナ、

そしてジャスタウェイにゴールドシップ、マカヒキの7頭は、

全て500kgを超える馬体を有しており、

勝てないまでも食い下がった前出4頭の馬たちよりも、

「見栄えのする好馬体の持ち主だった」

という事が分かります。

 

例外は2頭で、

第90回(2011年)10着のヒルノダムールと、

第93回(2014年)6着のハープスターのみ。

 

この2頭にしても、

ヒルノダムールがデビュー時458kg→引退時が472kgで、

凱旋門賞前の天皇賞・春を制したときは474kg(最高で482kg)の馬体重がありました。

ハープスターもデビュー時が474kg→引退時が490kgで、

牝馬である事を考えれば大きい部類に入ります。

 

このように、

見栄えのする好馬体は本来良い事のはずですが、

馬体重が重いと、凱旋門賞では好走できない

という、ひとつのジンクスが浮かび上がります。

 

 

また、今回池江調教師はレース後に、

「東京2400mならエネイブルよりうちの方が強い」

という発言をされていましたが、

この意見に賛同するはしくれ、

そこにもまた根拠があります。

 

それは、

実際に仕上げてきた凱旋門賞馬が、

東京競馬場では日本馬に全く歯が立たなかった

という事実が有るからです。

 

その一戦は2011年、11月27日に開催された、

第31回ジャパンカップ

での出来事です。

 

この日、ジャパンカップの1番人気には、

その年の凱旋門賞馬・デインドリームが推されました。

この馬は10番人気の伏兵とはいえ、

5馬身差で凱旋門賞を圧勝。

これを考えれば1番人気に推されるのも当然の事だと思います。

 

ですがこの日最高に輝いたのは、

この欧州の3歳牝馬ではなく、

日本が誇る最強牝馬・ブエナビスタでした。

 

この日のデインドリームの馬体重ですが、426kg。

はしくれはこの目でしっかりと確かめたので、

実際に小柄な牝馬である事に、間違いはありません。

しかも輸送で減っている様子もなく、

間違いなくこの日同馬は、きっちり仕上がっていました。

当のはしくれもその出来に、本命を打ったほどです。

(因みにはしくれの相馬眼の見方は、パドックの見方、お教えします!で公開しています)

 

しかし、勝てませんでした。

日本の強豪馬を相手に、掲示板にも乗れずの6着に敗退。

凱旋門賞優勝がフロック視されそうですが、

デインドリームは翌年の「キングジョージ」も制しており、

その強さには疑問の余地がありません。

 

はしくれはこのジャパンカップが終わってからというもの、

次のような疑問を持つようになりました。

 

「デインドリームは確かに仕上がっていた。でも、小柄なのも間違いなかった。

これが凱旋門賞を勝った馬なら、この事が無関係なはずがない。」

と。

 

その疑問を抱きつつ、日本馬の挑戦を見守ってきた10年。

中々届かない凱旋門賞の勝利に、

「馬体重」

という、一貫性を見出す事ができました。

そしてこの部分には日本と欧州の競馬の違いと、

それによる弊害が感じられます。

 

それは、

日本競馬が進めてきた高速化の弊害

です。

 

 

日本の競馬はスピードを出す事に傾いており、

GⅠ開催時には芝が刈り込まれてスピードが出る状態だったり、

スピード競馬が主流のアメリカ血統の馬たちが数多く見られます。

 

同じ2400mのGⅠレースでシャンティイと東京を比べてみると、

今年の凱旋門賞が2分28秒69で、

今年の日本ダービーが「遅い」と言われて2分26秒9ですから、

シャンティイが重馬場だったとは言え、

シャンティイはかなりタイムがかかるコースと言えます。

 

一般的に芝が深いと言われる欧州のコースですから、

クッション性が高くなり、

それだけ反発が少なくなります。

砂の上とアスファルトの上なら、

どちらが速く走れるのかが言うまでもないように、

欧州の馬場と日本の馬場では競馬の質が違うのです。

 

ですから、ある一頭の馬が硬いコースで速いタイムが出せるからと言って、

柔らかいコースでタイムがかかるレースを勝てるという訳でもないのです。

それぞれのコースにはそれ特有の、勝つための馬作りが必要になる訳です。

 

また、20年競馬を見てきて、

はしくれ自身、馬が変わったと思うことがよく有ります。

それは特に、「大型馬が多くなった」という実感です。

これは統計を取っていないので実際には分かりませんが、

少なくとも博物史では間違いのない事でもあります。

 

極端に言えば日本の競馬は、

スピードを上げて中距離を驀進する

という事をテーマに掲げた競馬です。

対して欧州は道中時間をかけながら、

精神とスタミナの限界に挑む競馬

を掲げている訳です。

 

人間でも短距離走の選手と長距離走の選手では、

体の作りが異なるのはお分かり頂けると思いますし、

求める結果や頂点が違えば、そこには必ず影響が出ます。

 

日本の馬は速く走る事を要求されるために筋肉が厚く、

それを支える為に骨格は、より大きくなります。

そして、筋肉は重いですから、

当然馬体重も重くなります。

 

この重さが、

のめり込みやすい欧州の馬場

に向かないのだと思います。

 

馬産家はそれぞれの国の頂点を意識して馬作りをしますし、

日本で言えば日本ダービーを目標に馬作りをする訳ですが、

たとえ距離が同じとはいえ、

これがイコール「凱旋門賞を勝つために適した馬」とはならない訳です。

 

その上、凱旋門賞は日本国内でビッグレースを勝たない限り、

出走できるレースでもありません。

 

競馬の国際化が進んで条件を満たせば出走できるとはいえ、

「凱旋門賞に適性がありそうだから」

という理由だけでは、

遠征できないのが実情です。

 

ですから、

凱旋門賞を勝てる力が有っても、

日本のレースが勝てない為に、

国内でくすぶっている馬も居るとはしくれは思います。

とにかく目指す頂点の質が全く違うのです。

 

これからもこの部分が修正されていかない限り、

日本馬の挑戦が実を結ぶのは難しいと感じています。

 

凱旋門賞で日本馬が勝てない理由。

 

それは馬体重という事実と、

日本馬が置かれている環境にあります。

 

これらをくぐり抜けた一握りの馬にだけ、

現状チャンスがあるという、

凱旋門賞は本当に狭き門です。

 

だからこそ面白い、という見方も有ると思いますが、

本当に悲願なら、環境を整えるべきだと思います。

 

それは凱旋門賞を見据えた馬産からコース作り、

適性面を考慮した有力馬の選出や、

中央競馬の番組作りなど・・・。

一競馬ファンとして、凱旋門賞に出走する日本馬が、

いつか凱旋門賞で優勝するシーンを切に願っています。

 

そしてこれからも日本馬の戦いを、

皆さんと共に見届けて行きたいです。

夢を掴んだその先の景色を、

見てみたいです。

 

狭き門を広くする事も、

日本競馬なら可能だと、はしくれは思います。

その無限の可能性が現実になる日、

その時こそ新しい日本競馬の幕開けとなるでしょう。

 

*サトノダイヤモンド、サトノノブレスの両馬と関係者の皆様、遠征、大変お疲れ様でした。夢を届けて下さった事、この場を借りて心より御礼申し上げます。ありがとうございました。




投稿者: はしくれ

現役のプロ競馬ライターです。パドックが一番得意で、JRA全場を踏破。地方・中央問わず競馬が大好きで、ブログを通じて収支改善のお手伝いをしたいと思います。

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