JRA(中央競馬)の一大改革!降級馬が居なくなる?

 

こんにちは、はしくれです。

今、中央競馬は夏競馬真っ盛り。

夏らしいハンデ戦や、荒れる重賞

突然の大雨や上がり馬の台頭などなど

今年も夏競馬らしい熱戦が繰り広げられています。

 

そんな中、先週の7月28日土曜日

JRA・日本中央競馬会から

このような驚きの発表が競馬ファンにもたらされました。

 

<4歳春季競馬までに獲得した平地収得賞金の取扱い>

現行
4歳春季競馬までに獲得した収得賞金を(4歳の)夏季競馬開始時点で2分の1とする

変更後
4歳春季競馬までに獲得した収得賞金を(4歳の)夏季競馬開始時点で2分の1としない

 

上記はJRAのホームページより抜粋したものですが

これはとても大きな改革です。

 

今日はなぜこれが重要な改革なのか

それをぜひあなたにお伝えしたいと思います。

 

☆降級馬が居なくなる

 

・・・この文面から先ず分かることは、

夏競馬の風物詩の一つである、上位クラスからの降級馬が存在しなくなる

という事です。

 

これだけだと分かりづらいので簡単に説明すると

中央競馬にはまず

収得賞金に応じたクラス分け制度

というものがあり、これは

レースで1着か2着に入ると得られる「本賞金」を

いくらその馬が稼いだかでクラス分けされる制度

になります。

 

3着以下でも賞金は出ますが

それらは本賞金には加算されず、

「総賞金」として加算される事になります。

(*一般的に競走馬が稼いだ賞金としては総賞金が取り沙汰されます)

 

現行の制度では

競走馬がデビューできる2歳戦から

4歳の夏を迎えるまでに

一頭の馬が収得した本賞金を一度、4歳の夏に半分にして計算する

という制度で施行されていまして

 

それによって

本賞金が現行クラスの収得賞金に満たない馬は、

下位クラスへと降級する措置

が取られていました。

 

そして、この制度には以下のようなメリットがありました。

 

①早熟傾向の強い馬が

早い時期に賞金を稼いだものの

成績が頭打ちになり

上位クラスで活躍できなくなったりしている時

クラスが落ちて活躍しやすくなる。

 

②逆に晩成傾向の強い馬が

体が完成される前に上位クラスで伸びあぐねている時

下位クラスに降級する事で賞金を稼ぎやすくなる。

 

③降級する事を見越したローテーションを考え

少しでも多くの賞金を稼げるよう

所属馬を管理する調教師は作戦が立てられる。

 

④馬券を買う競馬ファンは

上位クラスから下位クラスに転じる実力の高い馬たちを

馬券で狙い撃ちすることができる。

 

主に以上の4点が挙げられますが

こうしてみると4以外は、主に

馬主が一頭の馬で賞金をより多く稼げるような配慮

とも見られます。

 

もちろんこれは競走馬の為にもなるわけですが

基本的には馬主の強い影響力を物語っている制度と言えます。

ところがこの制度がなくなると、どうなるでしょう。

 

①早熟で頭打ちになった馬や

晩成で伸びあぐねている馬にとっては

活躍の場が少なくなる。

 

②一頭の馬で多く稼ぐ事が難しくなれば

それだけ馬主の「見切り」も早くなり

二度と見る事のできない馬が増える。

 

③管理する調教師としても

レース選択の幅が狭まる事になり

それだけ管理馬のローテーションに余裕が持てなくなる。

 

④降級馬を狙い撃ちしていた馬券スタイルが

二度と再現できなくなる。

 

このような事態が訪れます。

 

 

天高く馬肥ゆる秋

という言葉がありますが

競走馬は秋を迎える時期に成長する事が多く

3歳の夏を越えて他馬が成長してくると

どうしても早熟の馬には苦しくなるわけです。

 

救済処置としては地方競馬への移籍

などもありますが

やはり一番の心配は早熟馬の今後でしょう。

 

地方競馬では競走馬そのものが不足し

1レースの出走馬が少なくなる傾向もありますが

この改革で全ての競走馬が地方に移籍するわけではありませんので・・・。

地方競馬への移籍が救済処置になる場合は

はっきりと言ってしまえば多くはないでしょう。

 

ではなぜ

長年に亘って施行されてきた現行制度を

JRAが見直す事になったのか。

JRAの発表としては、次の通りです。

 

<期待できる効果>

・各クラスに応じた実力の拮抗した興趣溢れる競走を提供できること

・高条件競走の増加により、レベルの高い競走をより多く提供できること

・原則として、勝利度数に基づいた分かりやすい「クラス分け」となり、お客様にとって、より分かりやすく参加しやすい制度となること

 

この3つが理由です。

つまりJRAの趣旨としては

馬主側ではなく、ファン側の視点に沿った改革

という事です。

 

これは果たして事実と言えるのでしょうか。

はしくれの見解を言えば・・・事実だと思います。

 

確かにファン目線では

特に競馬初心者の方にとっては

現行のクラス分け制度は分かりづらい

と思います。

 

新規競馬ファンを開拓する事

に主眼を置いているJRAにとって

今回の改革は当然の改革と言えるでしょう。

 

また、降級馬が居なくなることで

夏競馬で降級馬が突出した人気になりなくく

馬券的な興味が増すレースが増える可能性も否めません。

更に勝ち上がり制度によって

ハイクラスなレースが多く組まれるようになれば

観戦するファンの側も楽しみが増えるでしょう。

 

JRAの伝えるこの3点に関しては、もっともな言い分です。

ですが、本当にそれだけでしょうか。

 

 

今、日本の競馬はかつてないほどハイレベルになり

一時はジャスタウェイが世界ランキングで単独首位に立つなど

スピード感をもって国際化を果たしてきました。

 

凱旋門賞にはあと一歩届いていませんが

2着までなら既に3頭が入線するまでに

日本の競走馬は劇的な成長を遂げています。

 

ですが、このような改革の陰で起こるのは

「見切り」のスピード化です。

早熟馬の見切りが早まったり

晩成馬の成長が待てなかったり

見切られる馬たちが増えるのは悲しい事です。

 

新しい馬を活躍させるサイクルが早まることで

馬産も活気づくでしょうし

それはそれで、悪い事では無いのかも知れません。

ですが、スピードを追い求めるだけでなく

競走馬を長く大事に出来るシステムも、同時に必要だと思うのです。

 

今回改変されるこの事項も

馬を長く所有する馬主のために、役立っていただけに・・・

一概に改善とは言い切れない、複雑な心情です。

 

はしくれは名前どおり、競馬人のはしくれとして

今までも中央競馬のお世話になってきました。

今回の発表は、JRAの挑戦として悪くない改革だと思います。

ただまず競走馬ありきの競馬の世界

競走馬はもっと大事にされてほしいとも思うのです。

 

簡単に解決策を提示できる問題ではありませんが

中央競馬の方々の知恵と、一競馬ファンの願いをもって

よりよい競馬の発展を探ってもらいたいと思います。

 

この改革は2019年の夏競馬から適用されます。

あと2年しかない夏を

この目に焼き付けて行きたいと思います。

 

競馬とは何か。プロ競馬ライターとして・・・。

こちらもご覧下さい。

 




 

 

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